knight6:逃さない、愛している

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 嬉しそうに言うシリウスにリィルは舌打ちをする。だめだと脳が警鐘を鳴らす。この人の幸せを思うなら、決して受け入れてはいけない。 「おまえ……後悔するぞ」  リィルは冷たく言い放つ。しかし、シリウスは気分を害した様子もなく続けた。 「構わない」  それは揺るぎない決意だった。もうシリウスの心は決まっているのだろう。なら、これ以上何を言っても無駄だと思った。この想いはここで断ち切らなければならない。シリウスの心を解放してあげなければならないのだ。リィルは大きくため息を吐いてから口を開く。 「そうかよ……わかった、じゃあこうしようぜ」 「……なんだ?」  リィルの言葉に首を傾げるシリウスに、嘘くさい笑みを貼り付けてリィルは答えた。 「おまえとは、もう会わない」 「なっ……」  リィルの言葉にシリウスは絶句する。 「私はおまえとはもう関わらない。だから、騎士のおまえに命令する」 「……っ……なんだ?」  動揺を隠せないシリウスだが、それでもなんとか聞き返す。リィルはそんなシリウスに冷たい眼差しを向ける。 「二度と私に近づくな」  その言葉にシリウスが息を飲むのがわかったが、リィルは続ける。 「まだ騎士でいるおまえは、今度こそ守れるはずだよな?」 「っ……」  シリウスは悲痛に顔を歪める。それを見てリィルは泣きそうになった。ごめんと、こんなに傷つけてごめんと言いたい。でも、これしか方法がないから。  ーー心を鬼にする。 「もう話は済んだよな?帰っていいか?」  リィルが冷たく言い放つ。シリウスは拳を握りしめる。その姿に目を背けてリィルは立ち上がった。 「いやだ……」  それは、とても小さな声だった。リィルはシリウスの方を見る。そこには、縋るような顔をした美丈夫の姿があった。  
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