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「リィルなしでは無理だ。リィルがいないとだめだ。決して離したくない。誰にも渡したくない」
震える声でそう言うシリウスにリィルは、動けなかった。彼のこんな姿を見るとは思わなかったからだ。
「応えてほしい。身分も、肩書きも、家柄もそんなこと関係ない。それほどまでに、この想いは熱を帯びて燃え盛っている」
縋るようにリィルを見つめるシリウスに、リィルは唇を噛み締める。そうでもしなければ涙が溢れそうだったから。それでも、受け入れてはならないとわかっているのに。やはり冷たく突き放すのは辛かった。だから、今までと違い逃げずにまっすぐ見つめ返す。
「……駄目だ」
「何故?」
「言ったろ?私は平民でおまえは騎士で、貴族。結ばれるなんてありえないんだよ」
そう言って自嘲するリィルをシリウスは悲しげに見つめた。
「身分……か」
「そうだ」
「……そんなもの、全部いらない。私は君と共に生きていきたい」
きっぱりと言い切るシリウスにリィルは泣きたくなる。身分を捨ててまで、自分といたいと言ってくれることが嬉しかった。それでも……リィルには応えられないのだ。
「無理だ」
「……そんなに、私が嫌いか?」
「ああ、大嫌いだ」
その言葉にシリウスは目を細めて、先程まで泣きそうな顔をしていたのに、眉を下げて笑った。
「君は、本当に嘘が下手だな」
「っ……」
「私は君を絶対に逃しはしない。たとえ地の果てだろうと追いかける。そして何度でも君に伝えよう。好きだ、愛している」
シリウスはリィルの意地っ張りで頑固なところとか、本当は強がってるだけで泣き虫なところとか。その全てが愛しくて、可愛くてたまらないのだ。だから、今必死に嘘をついている彼女を逃がさないし諦めない。
「君を愛してる」
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