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シリウスの琥珀の瞳はリィルしか見えていない。狂ったように愛に溺れて、自らの持ってる全てを捨ててまでリィルを欲しがった。
「どうして、私なんだよ」
苦しげに顔を歪めるリィルにシリウスは微笑む。
「理由なんていらないんだ。ただ、君に惹かれただけさ」
真っ直ぐな言葉だ。飾り気のない言葉を言われれば言われるほど胸が軋むように痛む。それはまるで刃で刺されているかのよう。
「君は?私のどこが好きなんだ?」
「……っ……知るかよ!」
叫ぶようにそう言って、俯く。リィルはもう、限界だった。必死に繋ぎ止めていた理性の糸が切れる。
この人にずっと想われていたくて、この人の未来の邪魔をしたくなくて、そのために気持ちに蓋をしたのに。
「おまえ、本当に……バカだろっ」
そう吐き捨てた。
リィルは騎士のシリウスが好きだった。それを、壊してしまったのは自分。愛しか見えていない狂ったこの人を止めるにはーー……
その手を取らなければならない。
好きで、大好きでこんなにも想われて焦がれてしまう。シリウスに対して蓋をした自分の想いが溢れる。
「命令だ。おまえは最期まで騎士として生きろ」
リィルの言葉にシリウスは拒絶されたと悲痛な顔をした。
騎士を捨ててもたった一人の男としてリィルを愛したいのに、やはり叶わないのかと。
ーーしかし、それは違った。
リィルはゆっくりとシリウスの隣に座る。そして、彼のその手に触れた。シリウスは驚いてリィルに目を向ける。リィルは真っ赤な泣きそうな顔でシリウスを見ていた。
「リィル……?」
「……わかれよ、バカ」
その言葉に、シリウスの心臓が高鳴る。かつて「絶対に触れるな」と命じられ、それをずっと守ってきた。それが今、もう必要ないというように解かれた。
「リィル……好きだ、愛してる」
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