55人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉にリィルは、その目をこれでもかと蕩けさせて甘い笑みを浮かべたのだった。
***
「え!それで、まだキスどまりなの!?」
朝のティータイムにエレナが目を丸くしてリィルに聞けば、顔を顰めてエレナの前にリィルはお茶菓子を置く。
「あの、お嬢様。大きな声でそのようなことは言わないでもらえますか?」
「えー、びっくり。てっきりもう二人はラブラブなんだと思ってたのに」
「話を聞いてください」
「だって、せっかく想いが通じ合ったのに。もうこんなにのんびりだなんて」
ブーブー不満気にするエレナにリィルはため息を吐いた。あれから、二人きりでシリウスには会っていない。王都で会うことはあれど、周りに人もいる。決して二人きりになるのを避けているわけではない。
「私たちには、私たちのペースがありますから」
そう言うとエレナは仕方ないという風に納得してくれた。
しかし、やはり面白くなかったのだろう。案の定エレナはリィルに王都にお使いに行くように命じた。王都についたリィルは面倒なことをと内心思いながらも言われた通りに仕事をする。
「ーーやぁ、リィル」
後ろから呼ばれるその声。誰かなんてわかりきってるそれ。リィルは、あーまた面倒な奴がきたとため息を吐いた。
「なんだ、また来たのかよ」
リィルが振り返るとそこにはやはりシリウスがいた。
「ああ、私は君を守る騎士だからね」
そう言って蕩けるような笑みを浮かべるシリウスに、周りの女性たちは頰を赤らめていた。そんな光景をリィルはうんざりとした顔で見る。そして、周りをキョロキョロ見回した。
「おまえ、仕事は?見回りとかあんじゃないの?」
「そんなものは他の者に任せればいい。私にとって最優先はリィルだ」
最初のコメントを投稿しよう!