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そう言って微笑む彼は、また無駄に周りの女性を惑わせていた。騎士のまま、リィルを愛することを許されたシリウス。そのことが嬉しくて甘く微笑むものだから、リィルは何も言えない。
「リィル、これからお使いかい?」
「あー……うん」
「そうか。じゃあ私も一緒に行こう」
そう言ってシリウスは、当然とばかりにリィルの隣を歩く。そんなシリウスにリィルは苦笑するしかない。
あれからというものシリウスはとにかく甘いのだ。今まで以上にリィルに対して愛を囁くし、スキンシップも過剰だ。それが嫌というわけではないが気恥ずかしいのと周りの視線が痛いのでやめてほしいのだが。しかし言っても聞かないからもう諦めている。
「おい、近すぎ。くっつくなよ」
たまにこのように反抗してみるが、シリウスには効果がない。騎士のシリウスと執事服をきた目つきの悪いリィルが一緒にいれば嫌でも注目を浴びるというのに、全然気にしないのだ。
「嫌がる素振りなどするなんて、リィルは素直じゃないな」
「いや、本当に嫌なんだけど」
そう言ってリィルが呆れつつ一歩先に行けば、すぐさまその手をシリウスが掴んだ。
「おい、離せよ」
「何故?」
「はぁ?そんなの恥ずかしいからだよ」
「いいや、そんなはずはない。リィルは私と手を繋いで喜んでいる」
その自信はどこからくるのか、シリウスは自信満々に言い切った。
「は?」
リィルはシリウスの言ってることが分からず眉を顰める。そんなリィルの手をシリウスは自分の口元へ持っていき、口付けを落とす。その行動にリィルは思わず硬直した。周りからは黄色い悲鳴が上がるがそれどころではない。
「なっ!」
真っ赤な顔で口をパクパクするリィルを見て、シリウスは嬉しそうに微笑んだ。そして、そのままリィルを抱きしめる。
「あぁ……なんて可愛いんだ」
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