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シリウスは少し誇らしそうに笑う。その笑みはまさにイケメン騎士そのもので、ああ……これで何人の令嬢が恋に落ちたのだろうかとリィルは苦笑いをした。
「私は近衛騎士として、民のために常に尽力する心構えだ。だから、君もいつでも私を頼ってくれて構わない」
「それはそれは、ありがたいことですね」
「ああ。それが騎士というものだからね。守るために、全てを捧げる」
シリウスは本当に嫌味なくハッキリと騎士としての行動をとる。隣で聞いていたリィルはそれが羨ましくなった。
自分の目標があって、そこに全力を捧げることを。そんな騎士に守ってもらえる、この人がそのうち仕えるであろうたった一人の未来の主人のことを。
だから、無意識だった。
「ーーいいなぁ」
そう、呟いてしまったのは。
シリウスはその言葉に反応し、リィルの顔を見る。その瞳は驚いたように見開き、けれどすぐに微笑みを浮かべた。
「今だけは、私は君の騎士だ。馬車まで君を無事に送り届けるまで、私が守り仕えよう」
シリウスの言葉にリィルは恥ずかしくなった。自分の浅ましい気持ちを知られて。しかし、それ以上に……嬉しくもあった。
こんな男みたいな見た目だから、リィルは今まで男性に女扱いされたことがなかった。リィル自身も気にはしないでいたが、本心は周りの綺麗な令嬢のように自分だけの騎士に生涯尽くされてみたかった。
「あ、ありがとう……ございます」
リィルは恥ずかしさから、感謝の言葉が小さくなってしまった。だけどそんなリィルの心情などシリウスは知る由もなく「存分に、私を使ってくれ」と笑った。
ああ、やっぱりずるいなとリィルは思う。こんな風に笑ってお礼を言ったり、助けに来てくれるだけでどれだけの令嬢が彼に心を奪われたか。
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