knight1:私は君の騎士

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knight1:私は君の騎士

 ついてないって日は、なんだか起きた時からそういう気配がする。朝ベッドから降りる際に足を滑らすとか、仕事中に洗ったばかりのシーツが地面に落ちたとか、賄いの昼飯が砂糖と塩を間違えてたりとか。  細かいのまで数えればキリがない。そんな日は人生で何回かある。しかし、神様……こればかりは、ちと最悪すぎないか? 「こーんなところで何してんの兄ちゃん」  リィルは今最大のピンチを迎えていた。最大とはちと大袈裟すぎたかもしれないが、本人にとってはそうなので仕方がない。  リィルは庶民であり、貴族の家に奉公に出ている17歳の少女だ。地声の低さ、黒髪のベリーショートと目つきの悪い茶色の瞳、背丈も173cmときたものだから、男性に間違われることも多々ある。それは女のくせに執事の服装を着ているというのも理由の1つなのだが。  リィルが屋敷で働いているところを見た者のほとんどは、「あの目つきの悪い奴か……」と顔を引きつらせる。周りは当然男として認識していたし、リィルはそんな視線にも慣れたものだった。むしろ「目つきが悪い」という特徴のおかげで、普段は変なナンパなどないことに感謝さえしている。  さてそんなリィルだが、現在進行形でならず者の男達に絡まれている真っ最中である。これも近道だからと王都の中でも治安の悪い裏道を抜けようとした自分への甘さの報いかとため息を吐きそうになった。 「いやー、あの……私、急いでいるので」 「そんなこと言わないでさぁ、時間とらせないから」 「そ、出すもん出してもらえればな」  ゲラゲラと笑いながら、男達はリィルに詰め寄る。完全に男だと勘違いされてるようで、体を要求されることがないのは幸いだった。しかし、その他の物をよこせと言われているのでピンチに変わりはない。 「何にもないですって」 「金目のもんあんだろが、さっさと出せ!」
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