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あれはただの夢だった。魔法なんてない。
「琥太郎先輩」
「なに?」
その勘違いがあって琥太郎とつきあうことができた。魔法はなかったけれど、嘘のように幸せな現実がある。
「バナナクレープ食べたくないですか?」
「ない」
「でも」
「いいからこの問題やって」
昼休みに勉強を見てもらって、テストに備えている。準備期間には学校帰りに図書館で勉強を教えてくれるとも言われている。
「琥太郎先輩の勉強は大丈夫なんですか?」
「へえ。人の心配する余裕あるんだ?」
自分に自信がないのは、そう簡単には変えられないけれど、少しずつ変わっていきたい。いつでも琥太郎が導いてくれる道を、一緒に歩いている。
もし本当に魔法で琥太郎の心を変えていたらと考えると怖くなる。彼自身の意志を奪うようなことはできなくてよかった。
琥太郎が直也を見て選んでくれた。それが真実。
(終)
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