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私の願いとは遠いところで、一か月ほどの間に黒死病はあっという間に広がっていきました。王都では多くの人が病気にかかったようで、ルイさんは途中から王都に行くのを控えるようになりました。
そんなある夜のことです。眠っていたら、外が騒がしくて目が覚めました。外で誰かが言い争っている声が聞こえてきます。ケンカでしょうか、と思っていたら、慌てた様子のユノ君が部屋に飛び込んできました。
「セラ姉、逃げて!」
ドアが開いて、言い争っている声がはっきり聞こえてきます。
「魔女を出せ!」
「この村には魔女なんていねえ!」
それは、一度も聞いたことのないような、殺気だった声でした。
ユノ君は焦りながら外の方へと私の手を引きます。
「流行り病は魔女の黒い林檎のせいだ。だから体が黒くなって死ぬんだって、魔女を出せって人たちが集まってきて! 今は村の人たちが防いでるから、今のうちに――」
ユノ君の言葉が途中で止まります。再びドアが開き、三人の兵士が入ってきました。全身を兜や鎧で覆っていて、顔もよく見えません。
「お前が魔女だな。悪いが来てもらおう」
ユノ君が私の前に立ちふさがりますが、それに構わず兵士の一人が私の腕を掴むと鎖の付いた手枷を私の腕につけました。
村の外へと引っ張られていくと、村の人たちは心配そうに私を見て、村の外にいた人たちは歓声を上げています。そのまま私は馬車に乗せられ、馬車はすごいスピードで走り出していきました。
その途中、幌の隙間から炎が見えました。どうやら、果樹園が燃えているようです。
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