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「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
意外にも彼は二日酔いにもなっておらず、用意した朝食を綺麗に平らげた。
「あの、昨日からありがとう……えっと……」
「貴方が大学のベンチで熟睡していたので、そのままにしておいたら凍死すると思い、連れ帰りました」
「あー……ご面倒おかけしました」
「それより、奥さんに連絡等は大丈夫ですか?」
「……ありがとう、少し連絡してくるね」
「えぇ、必要なら僕からも奥さんに説明しますので呼んでください」
「……何から何までありがとう」
僕が奥さんという言葉を出した瞬間、彼はへらりと眉をさげて少しだけ困った顔をしていた。
まぁ勝手な外泊だから、心配させてしまった分叱られるのは仕方ないので、それはきちんと受け止めて欲しい。
ただ見当違いな浮気だとかを疑われているなら可哀想なので、そこだけは違うと説明が必要なら説明するつもりだ。
でも連絡のため席を外した彼は、僕を呼ぶこともなく何事もなかったように戻ってきた。
「大丈夫でしたか?」
「うん、ありがとう」
「ちなみに時間があれば一度家に帰った方が良いですよ、まだお酒臭いので」
「あはははは、だよねぇ」
「無茶な呑み方は気を付けて下さいね、心配する方がいるんですから」
「……君はいい子だね」
突然、彼は寂しそうな顔をして僕の頭を撫でる。
何故彼がそんな顔をするのか、こんなことをするのか僕にはわからなかった。
ただ僕は生憎、彼が思うよりも良い子ではないので胸が痛んだ。
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