33人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい、どうぞ。お入りなさい」
ドアの向こうから、低く渋い声が聞こえた。
波瑠は、緊張がピークに達したが、震える手でドアを開けた。
「渋谷課長!」
波瑠は、叫んだ。
そこには、渋谷課長が立っていた。
「波瑠?! どうして、ここに?」
その渋谷課長の前には、大きく立派なデスクがあって、そこには、平川優一知事が、いた。
平川知事は、知的で渋い、口髭のイケメンだ。
テレビでは、よく観るが、実際に会うのは初めてだった。
波瑠は、渋谷課長に説明するのも、もどかしく平川知事に向かって、一気に叫んだ。
「平川知事! 渋谷課長をクビになんてしないで下さい! 渋谷課長は、全然悪いことなんかしてません! 勝手に雑誌に写真を撮られただけなんです!」
「君は、、?」
平川知事が、不思議そうに、波瑠に訊いた。
それに、渋谷課長が答えた。
「私の妻です。元本庁職員でした。すみません。妻が、こんな、つまらないことを、、」
急に、平川知事が、大声で笑った。
「こりゃ、一本取られたな。つまらない、妻か! あははは! ダジャレじゃあ、僕は負けないぞ」
そう言うと、平川知事は、考えこんでから、手を打って、波瑠に顔を向けた。
「奥さん!」
「え? あ、はい!」
波瑠は、何を言われるか、と構えた。
その波瑠に平川知事は言った。
「あなたの旦那さんは、イケメン、、。ラーメン、イケメン、僕、ちじれメン!」
「は?」
波瑠と渋谷課長は、ポカンとした。
その二人に、じれったそうに、平川知事は、説明した。
「だからあ、知事だから、ちじ・れメン!」
最初のコメントを投稿しよう!