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そのイケメンの男性は、名刺を出しながら言った。
「僕は、メンズファッション雑誌『COOL』の編集者の板垣と言います。旦那様のお写真を次号に掲載させて頂きますね」
『COOL』といえば、三十代男性をターゲットにした、有名メンズファッション雑誌だ。
波瑠は、期待で、ドキドキした。
うちの旦那様が、モデル!
ああ、なんて、素敵なの!
波瑠は、『COOL』の発売日を、楽しみに待った。
そして。
発売日。
波瑠は、一番に本屋に行き、『COOL』を買い、待てなくて、その場で雑誌を開いて、渋谷課長の載っているページを探した。
街角スナップのコーナーに、一番大きく、渋谷課長が載っていた。
すごく、カッコ良かった。
トレンチコート姿で、ちょっと嫌そうに、顔をしかめている姿が、まるで、ノアール映画のワンシーンのイケメン俳優みたいだった。
波瑠は、自分のことのように、嬉しかった。
だが、波瑠の予想外のことが、起こった。
その日の夜。
渋谷課長が、青い顔をして、県庁の仕事から、帰ってきた。
波瑠は、驚いて、訊いた。
「どうしたんですか?! 渋谷課長。体調が悪いんですか?!」
その波瑠の言葉に、渋谷課長が、震える声で言った。
「波瑠、、 大変なことになってる」
「え? 何が?」
渋谷課長は、鞄から、ノートパソコンを出した。
そして、Xを開いて波瑠に見せた。
そこには!
話題の欄に、「#イケメン過ぎる県庁職員」という言葉と共に、あの『COOL』に載っていた渋谷課長の写真が、出ていた。
「ええ?!」
波瑠は叫んで、「いいね!」のマークを見た。
「ええ?! じゅ、10万?!」
波瑠は自分の目を疑った。
その波瑠の目の前で、さらにその数は、どんどん増えていく。
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