33人が本棚に入れています
本棚に追加
「渋谷課長をいじめないで下さい!!!」
波瑠は、司会者に向かって叫んだ。
「渋谷課長は、いつも一生懸命、真面目過ぎるくらい真面目に仕事をしています! 何も悪いことをしてないのに、こんなに騒がれて、県庁の仕事が出来なくなって困ってるんです!」
司会者は驚いたが、波瑠を嗤いながら見ると、言った。
「あなたが、渋谷さんの奥さんですね? 噂は聞いていますよ」
「え?」
「なんでも、元県庁職員だったらしいですが、あまりに仕事が出来ない無能な人間だったため、渋谷さんが、結婚して仕事をしなくて済むようにしたそうですね」
波瑠は、ショックで、泣きそうになった。
無能な人間、、。
波瑠が、一番、言われたくない言葉だ。
それは、波瑠自身が、自分のことをそう思っているからだ。
その時、バンっと音がした。
渋谷課長が、座っていた椅子を立って、机を叩いた音だった。
「黙れ! 妻は無能な人間じゃない。県庁の仕事が向かなかっただけだ。他に素晴らしい料理という特技がある。毎日、プライドを持って作ってくれている! 妻を侮辱する人間は、誰であろうと許さない!」
波瑠は、ビックリした。
渋谷課長が、こんなに怒ったのを見たことがなかった。
渋谷課長は、続けて言った。
「妻は、私の命より大事な運命の人だ。その妻を侮辱するなら、正式に訴える!」
司会者は、物静かだった渋谷課長の変わり様に、ビビってしどろもどろになって言った。
「え? い、いや、そんなつもりじゃなかったんですよ、ははは。ただのジョーク、ジョーク! 訴えるなんて、言わないで下さいよ。謝りますから」
司会者は、それから、波瑠に頭を下げた。
「すみませんでした、、奥さん、、。しかし、奥さん、幸せ者ですね。こんなに、イケメンで、仕事が出来て、深く愛してくれている旦那さんがいて、、」
司会者は、そう言うと、カメラに向かって視聴者に、語り掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!