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波瑠は、渋谷課長に声を掛けた。
「おはようございます、、渋谷課長」
「ああ、、」
渋谷課長は、心ここにあらずの返事をした。
だが、急に、真剣な顔になって、波瑠に言った。
「おそらく、今日、部長とともに、知事に依願退職を勧められるはずだ」
「え? 依願退職?」
「ああ。実質的にはクビだが、表向きは、私の都合による自主退職だ」
「ど、どうしてですか? 渋谷課長が自分から辞めることになるんですか?」
「そうなるだろう、、。その方が穏便で、騒ぎにならない。ただでさえ、あの騒ぎなんだ、、」
渋谷課長は、渋い顔をして言った。
そして、、。
渋谷課長は、仕事へ行く支度をして、家を出て行った。
波瑠が、頑張って作った朝食も食べずに、、。
波瑠は、納得が出来なかった。
なんで、全く悪くない渋谷課長が、好きな仕事をやめなければならないのだ!
一生懸命、勉強して入った県庁だ。
仕事も、やりがいがあったはずだ。
波瑠は、そう考えていたら、だんだん腹が立ってきた。
その時、波瑠のスマホが鳴った。
親友のミナミからだった。
波瑠が出ると、ミナミの大声が聞こえた。
「波瑠! 見たわよ! Xでの騒ぎ!」
波瑠も思わず、大声で答えた。
「そうなの! どうしよう?! ミナミ」
波瑠は、詳しい事情を話した。
すると、ミナミは、当然のように言った。
「波瑠! 知事に直談判するのよ!」
「ええ?!」
「それしか、渋谷課長が、辞めずに済む方法はないわ!」
「そ、そうなの?」
「そうよ! 波瑠。渋谷課長を愛しているなら、立ち上がるのよ!」
「そ、そうね! そうよね! あたしは渋谷課長のためならなんだってするわ!」
波瑠は、スマホを切ると、していたエプロンをかなぐり捨て、玄関に向かった。
県庁に行くのだ!
知事に直接会って、事情を話し、直談判するのだ!
渋谷課長が、辞めなくてすむように!
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