3人が本棚に入れています
本棚に追加
「茜のお眼鏡にかなうなんて、面白いじゃない。君、名前はなんて言うの? 歳はお母さんから聞いてるけれど」
俺は名前を答えると女性は手を伸ばしてきた。
「私は舞。大学二年生よ。私の方が年上ね。年下の男の子を見るとお世話したくなっちゃうわ」
握手に応じつつ思った。彼女、舞さんはお姉さん気質らしい。栗色の髪が背中にかかるほどのロングヘアーだ。
「お姉ちゃん、ずるーい。私も私も」
茜が手を伸ばしてくる。さっきの問答でどうすべきか分かっていた。彼女の言う通りにすればいい。
「これで茜の家庭教師は決定ね。ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名前は美里。二人の母親だけど舞とは血が繋がってないわ。旦那の連れ子よ。まあ、その旦那も数年前に亡くなったけれど」
なるほど、そういうことか。美里さんの年齢と舞さんの年齢が近いのはそういうことか。
「さて、あなたは茜の家庭教師なのだから、今日からこの家で暮らすことになるわ」
この家で暮らす? いや、話が見えない。
「あら、募集要項をよく見てないみたいね。書いてあるじゃない。『家庭教師は住み込みで行うこと』って」
言われるがままにスマホに目をやる。確かに下の方に小さな文字で書いてあった。いや、こんな小さかったら見落としても俺に非はないだろう。
「さて、今日からよろしく頼むわよ」
こうして俺の家庭教師人生が始まった。驚きと不安を胸に抱きながら。
最初のコメントを投稿しよう!