7人が本棚に入れています
本棚に追加
ユンソルは自分の部屋に戻ると、本棚から生物図鑑を取り出した。村長を襲った熊について、念入りに調べておきたい。だが、彼に読める字が少なかった。そのかわりにイラストや図面を見て、それを読み取ろうとしていた。図鑑には凶暴な熊ではなく、野生生活を営んでいる熊が写っている。まだ人を襲う熊の顔など、誰も想像できないはずだ。
村長を殺した熊はあれから村に来ることはなかった。食べ物をあさりに来たのだろうが、仄かに村に残る殺意が熊を遠ざけているのかもしれない。父が毎日のように山奥で銃声を鳴らすのは、熊を牽制するためなんじゃないかと彼は考えていた。実際に手柄が無くとも、銃声を鳴らしていたのだから。
「ねえ、坊や」
いきなり部屋の扉から声をかけられ、ユンソルは驚いた。振り向くと下宿している男 ウンビョルが顔の半分だけ覗かせている。
「どうかしました?」
ユンソルは椅子から下りてウンビョルのほうに近づいた。
「君、小さいのに狩猟をやってるの?」
「え」
「窓から見えるんだよ、俺の部屋の。
たしかにライフルを持ってた。」
「ええ…まあ」
ウンビョルは興味津々にユンソルを見ている。下手に話さないほうが良いと、ユンソルは察した。
「遊びです。ゴム弾ですから。」
「そっか。
じゃあ大きくなったら、実弾で撃つんだね」
ウンビョルの言葉にユンソルは言い淀んだ。
「大きくなったら…どうなるんでしょう」
「そりゃ…討伐隊に入るんだろ?」
ユンソルは曖昧に首をかしいでから「おやすみなさい」と挨拶をした。
最初のコメントを投稿しよう!