targets 1 熊

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ユンソルは自分の部屋に戻ると、本棚から生物図鑑を取り出した。村長を襲った熊について、念入りに調べておきたい。だが、彼に読める字が少なかった。そのかわりにイラストや図面を見て、それを読み取ろうとしていた。図鑑には凶暴な熊ではなく、野生生活を営んでいる熊が写っている。まだ人を襲う熊の顔など、誰も想像できないはずだ。 村長を殺した熊はあれから村に来ることはなかった。食べ物をあさりに来たのだろうが、仄かに村に残る殺意が熊を遠ざけているのかもしれない。父が毎日のように山奥で銃声を鳴らすのは、熊を牽制するためなんじゃないかと彼は考えていた。実際に手柄が無くとも、銃声を鳴らしていたのだから。 「ねえ、坊や」 いきなり部屋の扉から声をかけられ、ユンソルは驚いた。振り向くと下宿している男 ウンビョルが顔の半分だけ覗かせている。 「どうかしました?」 ユンソルは椅子から下りてウンビョルのほうに近づいた。 「君、小さいのに狩猟をやってるの?」 「え」 「窓から見えるんだよ、俺の部屋の。 たしかにライフルを持ってた。」 「ええ…まあ」 ウンビョルは興味津々にユンソルを見ている。下手に話さないほうが良いと、ユンソルは察した。 「遊びです。ゴム弾ですから。」 「そっか。 じゃあ大きくなったら、実弾で撃つんだね」 ウンビョルの言葉にユンソルは言い淀んだ。 「大きくなったら…どうなるんでしょう」 「そりゃ…討伐隊に入るんだろ?」 ユンソルは曖昧に首をかしいでから「おやすみなさい」と挨拶をした。
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