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熊の討伐隊は年々人員が減っていて、平均年齢が62歳という年配者で構成されたものだった。世代交代といえど、後を継ぐものがいない。討伐隊の若年が、何よりユンソルの父 サンチョルである。
考え事をしながら排莢口にゴム弾をねじ込んだら、指を排莢口とゴム弾のわずかな隙間にはさんでしまった。親指の腹にぷっくりと赤い玉が出来ている。それを口に含んで、茂みの向こうに集中した。
青い鳥が枝の上に止まっている。
狙いを鳥が止まっている枝の先端にして、ハンドルを下ろした。ゴム弾が放たれ、枝の先にふれる。枝は揺れ、その振動に驚いた鳥が飛び立っていった。
ウエストポーチには熊よけの鈴をつけていた。父が討伐隊の仲間から譲り受けたものである。ゴム弾を排莢口に入れようとしたが、狙うものが見当たらずにウエストポーチにしまいこんだ。その時にいつも鈴が鳴るが、この時はまったく音がしなかった。
嫌な予感がしてウエストポーチを見ると、紐につるした鈴がちぎれたようになくなっていた。やはり鈴が失くなると不安が膨れ上がる。ユンソルは木から下りて、芝生の上に着地した。それから父がいる方角へ走ろうとした時、右斜め後ろから視線を感じた。人の息よりも微かに荒い。
ウエストポーチに入っている手鏡を取り出して、さりげなく後ろをかざす。日差しの反射を受けて白くなったが、角度をゆっくり下げる。すると、太い枝にしがみつく熊の子供が映った。
ユンソルは振り向いて、熊を見上げた。
つぶらな瞳をした小さな熊は、ユンソルを見るなり歯を剥いて唸る。子熊だが警戒はした。彼は子熊に背を向けずに、ゆっくり後退る。
枝を踏んで、パキッと音が鳴った瞬間に冷や汗が出た。突然子熊が切ない声で鳴き、ユンソルの全身を大きな影が覆った。
振り向くと巨大な熊が背後に立ちはだかっていた。
「わ…」
熊の大きな前足が振り下ろされる。瞬発的に尻もちをついたために、その攻撃は逃れた。
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