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ユンソルは再び体を起こして、茂みから見えている男の胸を狙った。トリガーを絞るたびに、周りの音が消える。ターゲットと二人の世界にいる錯覚がおきた。
(なんだこれ…)
その光景になるたびに、ユンソルは不安に駆られた。
(誰かがそばにいないと俺は撃てないのか…?
もうキムはいないんだぞ…!
しっかりしろ…!)
「なんで撃たないんだろう」
リーはキョトンとした顔でユンソルを見やった。そのうち、リーを狙って銃弾が飛んでくる。トゥクに背中を引っ張られて、狙撃されずに済んだ。
「ユンソルを見ないで」
トゥクが警告すると、リーは肩をすくめた。
迷っているうちに、敵がユンソルに向けて発砲した。
「うわ…!」
上ずった声が出る。
後ろに尻もちをついて、弾を避けた。
「何やってんだ」
トゥクが彼のそばに来ていた。上体を起こされると、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
ユンソルはライフルをもう一度握りしめた。
「ユンソル。
利き腕じゃないんだ。大したものだぞ」
リーが励ますように叫んだが、ユンソルは歯を食いしばった。
(そんなの火に油を注ぐようなもんでしょ。
本当に無神経な時はとことんだな…)
トゥクはリーを白い目で見た。
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