7人が本棚に入れています
本棚に追加
熊の雄叫びは、山の中を走り回り、鹿を狙っていた父の耳にも届いた。
「ユンソル…」
咄嗟に心配した彼は、狩猟を取りやめた。すぐにライフルを前に抱えて駆け足に進む。
「お父さん…！」
ユンソルの叫ぶ声が聞こえた瞬間、全身の毛穴が粟立った。ライフルをすぐに撃てる状態にして、茂みを突破していく。
ユンソルが熊に背を向けて走り出していた。彼の走る先に太い幹があり、その真下に小さな窪みがある。
「ユンソル！穴に入れ」
父に叫ばれたユンソルは、咄嗟に幹を飛び越えると同時に穴の中に小さな身体をすっぽり入れた。同時に父のライフルが火を吹いた。
熊の仰け反った体が、顕になる。
首元に一発受けたが、熊は頭を揺すってすぐに持ち直した。狙いが父に代わることはなく、ユンソルである。熊は窪みに隠れたユンソルを引き出そうと前足を突っ込んだ。
ユンソルは限界まで窪みの中に体を入れる。
ウエストポーチを探っていると、弾薬が一つ出てきた。これは父の倉庫にこっそり入った時に、まるで戦利品のように一個だけ持ち去ったものだ。
最初のコメントを投稿しよう！