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タジも気が抜けてきたのか、路地を引きずるような足取りになった。足音が建物たちの中を響き渡る。寝静まった町に、人の気配はなかった。
「だから、思ったんだよね。
ルールを守らない人って、
結局ペナルティを喰らうんだなって。」
「……」
タジは堅実だ。
リーの組み立てたレールの上をしっかり歩いている。もしレールから片足でも外れてしまえば、すぐに自白して自分から折れる。ただの平和主義者ではなく、従兄弟のような思いをしたくない気持ちがあるのか。心のどこかで人間不信な部分があるから、感情を表に出さないのかもしれないと、ユンソルは考えた。
「だから先に謝ったんですか?」
ユンソルは緊張しながらも、聞いた。タジが足を止めて、ユンソルを見つめる。喉の奥がつっかえるような緊張を覚える。
「なんのこと?」
だが、予想外にも聞き返された。
「さっき、リーさんに…」
「あー。アレか。
アレは…違うな。」
相変わらず、のんびりと、淡々とした話し方をする。
「エンさんだけが怒られたら、嫌だからだよ。」
ユンソルは目を丸くした。
タジがエンに寄せる信頼は絶大なものであり、双方の信頼関係が理想の形に思えた。
自分だけが犠牲になればいいと思っていたユンソルと似通っている、いや根本的に違う。
片方の犠牲ではなく、一緒に同じだけ分け合う。
それがタジの考えだ。
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