7人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺の頭の中に天秤があるんだ。」
タジが続けて言った。ユンソルは圧倒されたまま、彼の話を聴き続けた。タジの言葉はスルスルとユンソルの中に侵入してくる。
「責任や重圧、痛みとか、そういったものを
エンさんと俺で測る。
必ず均一になるようにしないと、
気が済まないんだ。」
ユンソルは瞬きをした。頭の中の天秤。無意識に、自分を重くしていた。軽くなったほうの気持ちを考えずに…。
(自分だけ責任をかぶればなんて、一人で気持ちよくなってどうする。)
トゥクに言われたことがやっと分かった。
「そこが、俺と従兄弟の違いだと思う。
違うかな?」
タジが少しだけ口元を緩めた。その優しい顔がなんとも言えず、ユンソルの涙腺が緩んだ。この人は迷っているユンソルに、手を差し伸べたんだ。
「俺、腕が治りそうなんです。」
ユンソルがぽつりと言うと、タジは「ふーん、良かったね」と言った。
「はい。
だから、
カンダハルのあとは第三部隊に帰ります。」
タジは一瞬目を見開いたが、そのあとにため息をついて頷いた。
「それは良い考えだと思うよ。」
continue…
最初のコメントを投稿しよう!