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targets 15 鞄の中身
銃声が鳴った。
咄嗟に目を開けると、それが夢だったと自覚する。ひどい汗をかいている。夜中三時あたりになると魘されて目を覚まし、着替える。これがキムの習慣になっていた。隊員を増員してから、二人部屋だったところに6人の隊員が雑魚寝している。窮屈な思いをしながらも、このひと肌が孤独から解放してくれているような気がした。
不謹慎にも、夢の中でユンソルは何回も撃ち殺されている。一人ぼっちで死ぬユンソルを何度も何度も見てきた。
ドアの開く音がして、ドキリとする。
あれから、アジョウがまた呼び出すのではないかと怖くて仕方ない。ユンソルが腕を折られて連れ去られる光景が頭の中にこびりついている。
しかし、部屋の中に入ったのではなく出ていった音だった。雑魚寝している隊員の顔を見ていると、出ていったのがヒスイだと分かった。
キムはこっそりヒスイのあとをつけていった。
ヒスイは本館を出ていって、夜明け前の繁華街を歩いていく。どこに向かっているのか見当もつかないが、彼の足取りに迷いはなかった。
(女のところじゃねーだろうな)
しかし、ヒスイが立ち止まったのは小さな石碑の前だった。そばには花束が手向けられている。そこは墓場ではなく、車道の曲がり角だった。
交通事故死した被害者を悼むために設けられたようだ。
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