targets 15 鞄の中身

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ヒスイは立ち上がると、繁華街を振り向いた。 「軍事パレードがあるだろ。」 「軍楽隊のか」 「ああ。 去年の軍事パレードの時に、親父の持ってたコルトガバメントで撃ち殺してやろうと思ってさ。 ソイツはノコノコ来賓席に 座っていやがったんだ。」 しかし、使い慣れていないこともあり、撃つことの恐怖が勝って、撃てなかった。 「それで射撃部隊に入ったのか?」 「まあな」 「将校殺しなんて、よせよ。 そんなことをしても、妹は喜ばないぞ。」 ヒスイはじっとこちらを見た。目つきが鋭くなり、充血しているようにも見える。 「お前に何が分かる。」 「………」 キムは気まずくなって目を逸らした。ヒスイが咳払いをする。 「そういえば、トガニが言ってたが あの被験者のスポッターなのか?」 ユンソルのことだ。 ユンソルを被験者と呼ぶ輩に反発心を持つのは習性になっていて、途端にヒスイを睨んだ。 「ユンソルは被験者じゃない。」 「事実だ」 「とにかく、その呼び方はやめろ」 ヒスイが先に折れた。 「分かった。 そのユンソルとかいう奴のスポッターをなんで 下りたんだ?」 キムは拳を握りしめた。 「俺が愚かだからだ。」 「よく分からねぇな。」 「医療部隊には分からない。 いや、他の部隊には分からない。 スナイパーとスポッターの関係性って奴は、 射撃部隊(こ こ )にしか存在しないからな」 「じゃあ、これから知っていくわけか」 ヒスイが開き直るように言ったが、キムは頭を振った。 「あんなスナイパー、他にいない。」
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