targets 15 鞄の中身

4/10
前へ
/174ページ
次へ
「ますます分からねぇ。」 ヒスイは独り言のように呟いて、その場から立ち去った。キムはしばらく立ち尽くしていた。 (俺だって、これからどうしたらいいのか 分からない。 またユンソルのスポッターになるなんて、 烏滸がましい話なんだ。) ………… レミントンM40A3を胸の前で抱えながら、ユンソルは忍び足で寝床を抜けていった。それから待機地の屋上に登ると、ちょうど教会の屋根から日が顔をのぞかせていた。 ユンソルはレミントンを膝の上に乗せて、しばらく指先で銃身を撫でていた。 右腕は物を持つと、まだ痛みが走る。トリガーを引けても、利き腕で拳銃なんて握れない。完治まで遠い話かもしれないと、愕然としていた。 タジと二人で集めた食糧は、彼らに大いに貢献している。朝から思った以上の収穫だと、周りは喜んだ。あれからタジのことを意識するようになった。目の端で追いかけていると、やはりエンのそばにいる。無口だが、細やかな気配りが出来ているようだった。 「タジは、 スナイパーが羨ましがるスポッターだよ。」 突然、後ろから声がして驚いた。ジョンスである。ジョンスは暑そうに襟首を扇ぎながら、タジに顎をしゃくった。 「そうでしょうね。」 ユンソルも頷いた。 「俺もあんまり喋ることが好きじゃないからさ、 タジくらい大人しい奴だと助かるんだよ。」 ジョンスのスポッターであるチョルヒは、よく喋る。トゥクと同い年らしいが、よくホアンと一緒になってペチャクチャ喋っては「オチビさん」とリーに囃されていた。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加