7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ますます分からねぇ。」
ヒスイは独り言のように呟いて、その場から立ち去った。キムはしばらく立ち尽くしていた。
(俺だって、これからどうしたらいいのか
分からない。
またユンソルのスポッターになるなんて、
烏滸がましい話なんだ。)
…………
レミントンM40A3を胸の前で抱えながら、ユンソルは忍び足で寝床を抜けていった。それから待機地の屋上に登ると、ちょうど教会の屋根から日が顔をのぞかせていた。
ユンソルはレミントンを膝の上に乗せて、しばらく指先で銃身を撫でていた。
右腕は物を持つと、まだ痛みが走る。トリガーを引けても、利き腕で拳銃なんて握れない。完治まで遠い話かもしれないと、愕然としていた。
タジと二人で集めた食糧は、彼らに大いに貢献している。朝から思った以上の収穫だと、周りは喜んだ。あれからタジのことを意識するようになった。目の端で追いかけていると、やはりエンのそばにいる。無口だが、細やかな気配りが出来ているようだった。
「タジは、
スナイパーが羨ましがるスポッターだよ。」
突然、後ろから声がして驚いた。ジョンスである。ジョンスは暑そうに襟首を扇ぎながら、タジに顎をしゃくった。
「そうでしょうね。」
ユンソルも頷いた。
「俺もあんまり喋ることが好きじゃないからさ、
タジくらい大人しい奴だと助かるんだよ。」
ジョンスのスポッターであるチョルヒは、よく喋る。トゥクと同い年らしいが、よくホアンと一緒になってペチャクチャ喋っては「オチビさん」とリーに囃されていた。
最初のコメントを投稿しよう!