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アギトは爆破した建物には近づかずに、無線機から流れるタリバンの第1勢力で頭首ムハサの言葉を待った。自分を狙っていたスナイパーとスポッターを思い出すと、胸がざわめいた。
部屋のドアが開いたが、「あーあ」という声を聞くなりレブだと分かった。
「やっぱり探知されていたんだな」
背を向けたままレブに聞くと「ああ」と返ってきた。
「価値のない人質だと思うが、どうする?」
アギトは右後方を振り向いた。そこには胴体をロープで括られた歩兵がいる。口にはテープをつけられているから、弱々しい呻き声しか聞こえない。
「ムハサは殺せと言ってない。」
レブの答えはタリバンにとって、至極当然の言葉である。まだタリバンに染まりきっていないアギトはバカバカしいと思って嘲った。
「なんでもムハサの指示か。
殺す相手くらい、自分で決めたらどうだ?」
「おい、言葉を慎め。
お前がここにいられるのは、ムハサのおかげだ。」
アギトがライフルを握ると、レブは軽く腰を浮かせた。ホルスターの拳銃に手を触れる。外部からの協力者であるアギトに不信感があるのは勿論、一進一退の状況にも嫌気がさしてくる。
「俺を殺すかい?」
アギトがニヤッと笑って聞く。レブはホルスターから手を離した。
「それも指示はない。」
「おいおい。
だんまり頭首は死んでんじゃないのか?」
「何も喋るんじゃない。
その口が黙らないと、規律違反を起こしそうだ。」
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