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targets 16 頭首
ムハサ。
タリバン頭首そして、派生したとすれば第一勢力の頭首。分断した第二勢力の残党を虱潰しに殺している。そのやり方は非常に残虐である。
思ったよりも小柄で朗らかな笑みを浮かべているムハサの姿に、ユンソルは怒りすら覚えた。M40A3の照準器は、噴水広場に向かうムハサの後頭部にあたる。
「トゥクさん」
ふと、隣のスポッターに話しかけた。
まるで息をするように自然と口をついて言葉が出る。
「なんだ?」
「俺、不思議な感覚に襲われるんです。」
ムハサの行動を気にしながら、トゥクは黙って聞いてくれる。
「どんな?」
「トリガーに指を添えた瞬間に、
ターゲットと俺以外がたちまち消えるんです。
あそこは噴水広場でしょう。
今ね、俺には噴水が見えないんです。」
トゥクは呆気にとられる。
しかし、ユンソルの集中力は凄まじい。トゥクに話しかけている傍らで、クロスヘアはしっかりとムハサを捕らえていた。
「ムハサしか見えません」
ユンソルの口元が微かに緩んでいて、笑っているように見えた。その武者震いも、傍から見れば愉しんでいるように見える。
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