7人が本棚に入れています
本棚に追加
「殺しの神様がいるなら、
俺のこの才能は愛されている証拠ですね」
トゥクに話しかけているのか、もはや分からない。口ずさむような穏やかな口調がいつまでも続く。その間にも、ユンソルの視界からトゥクは消え、鞄は消え、噴水は消え、待ち伏せていた男は消える。
やがて、ムハサが従える二人の男も消えた。
「今日ほど、
その才能を愛したことはありません。
俺は今、すごく嬉しいんです。
この瞬間のために、
スナイパーをやっているんでしょうね。」
「ああ、そうだな」
トゥクも半ば笑いかけていた。
これほど緊張する場面で、ユンソルは笑っているのだ。トゥクは自然と双眼鏡をおろして、ユンソルに見入った。
(手本のような狙撃体勢だ。
これほどきれいなフォームを観たことがない。
この男は化ける。
もっと化けるぞ。)
ユンソルは音のなくなった世界で、ムハサの引きずる足音を聞いていた。彼の息遣いが指先まで浸透する。
「喰らえ…」
ユンソルのわずかに開いた唇から低い声が出た。M40A3が怒鳴り声をあげた。その音は部屋中の壁を這いずり回る。
ムハサの頭部が一瞬にして弾け飛んだ。
護衛の二人はすかさず振り向いてみせる。
最初のコメントを投稿しよう!