7人が本棚に入れています
本棚に追加
父は銃を熊の眉間に押し当て、ドスンと撃ち込んだ。熊の下にある枯れ葉が黒く染まった。父は安堵したあとに、両手で足を抱き起こした。
「手を貸してくれ」
ユンソルは素早く駆け寄り、父の真横に膝をついて座った。父はユンソルの泣きべそを見て苦笑いをした。それから彼の後頭部に手をあてて撫でると、「大丈夫か」と聞いてくれた。
「うん。僕は平気。
でも…お父さん、足が…」
父の左膝小僧からダクダクと血が溢れていた。父は自分が走ってきた方向を指差し「荷車に、麻布があるから」と言った。ユンソルは頷いて、すぐに荷車のほうへ走り出した。
熊の死体の近くに、ユンソルの放ったであろう弾丸が落ちていた。指で拾うと、弾頭に血がべとりとついていた。
体をいざりながら熊の死体をじっくり観察していると、銃弾が射抜いた位置が脇腹ではなく左の肺の側面をかすめていったのが分かった。
父が狙った頭上が効かなかったのは、頭蓋骨が固く銃弾が入りこまなかったからだ。熊の真後ろから撃ったのではなく、ユンソルから左後方 やや横向きに撃ったのが分かった。
(すべて計算した上で狙撃したとしたら…)
そんなことが父の脳裏をかすめた。
最初のコメントを投稿しよう!