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彼らの住む場所は山々に囲まれた人口1500人未満の小さな村だ。過疎化は深刻化し、村には年寄りが多いなか「ソ家」は去年 女児が生まれた。その四年前に長男のユンソルが生まれたが、この時も村をおこしてお祭り騒ぎであった。
「妹の世話もちゃんとやるんだぞ」
「うん。ハニは良い子だよ。
いつもニコニコしているよ。」
「ハニはお兄ちゃんが大好きなんだな。」
物静かだが、温かい人柄の父。子どもたちに一心に愛情を注ぐ優しい母。その二人のもとに生まれたユンソルもまた、穏やかな気質である。
この世にある争いごとや、悪いものを子どもたちが見ないようにと彼らが支えてきたのだ。
だが山は違う。
色んな獣がいる。中でも、毎年のように出没する熊は近年では村のほうに下りてきて村人を襲うことも少なくなかった。
「熊が出るんだぞ。怖いだろ。」
「怖くないよ」
「どうして」
「お父さんがいる。お父さんは最強だから」
「ははっ…。最強か。
最強ってなんだろうな。」
父は肩に下がったAK47を下ろすと、茂みの裏に膝をついて準備を始めた。ユンソルは隣にしゃがんで、その手順を観察している。あまりに早くて、覚えられそうにない。
それでも、見様見真似で、手元を動かしながら、あたかも そこにライフルがあるようにシュミレーションを始めた。
(こりゃいかん…。
この子は、ライフルに
興味を持ってるらしい。)
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