targets 0

4/10
前へ
/164ページ
次へ
その日の夜更け。 やはり山間の村には濃い霧が落ちて、一面が白く霞んでいた。眠っていたユンソルを起こしたのは、一発の銃声だった。かなり近くで聞こえた。ユンソルは飛び起きた。隣の部屋では、ぐずり出したハニを母が抱っこしている。 「お母さん」 ユンソルが声をかけると、母もまた不安そうな顔で振り向いた。 「こっちにおいで、ユンソル」 母はユンソルを片手で抱き寄せて、背中をトントン叩いた。 廊下の方からガシャガシャと音が聞こえ、ドアが開くと父が立っていた。肩には二挺のライフルがかけられている。優しい父の顔が違った。険しい顔つきになっていて、母と見つめ合っている。 「行ってくるよ」 「ええ。気をつけて」 父が立ち去ったあと、ユンソルの背中を叩いていた母の手が震えだした。 「ユンソル。 大丈夫よ。あなたにはお母さんがいる。」 ユンソルは母の顔を見上げて頷いた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加