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 二人で酒を飲んだ帰り道、空は真っ暗だった。  すっかり酔いが回っているのは水晶(すいしょう)で、まだ何とか動ける菫青(きんせい)に縋って歩を進めた。 「水晶。気付けなくてごめん。僕と同じ位飲ませちゃって」 「いいからぁ……早く帰ろう……」  やっと下宿に辿り着いて、階段を二人三脚のように上がる。  しかし、途中でずるりと力の抜けた水晶は、階段の踊り場で座り込んでしまった。 「水晶! 大丈夫か? とりあえず水を飲むか? 僕が取ってくるから……」 「いらん。行くな。休めば動けるから、ここにいてくれ」  俯いたままの水晶に強い語調で遮られ、菫青も腰を下ろして様子見をすることにした。  橙色の明かりでは、水晶の顔色がはっきりとは分からない。 「菫青。そこにいるなら、話に付き合ってくれねえか?」 「ああ、いいよ」  水晶はぼそぼそと、菫青にしか聞こえないような声で話し始める。 「俺は、ガキの頃から体が弱くて、親に散々面倒をかけたんだ。それでなぁ、アンタは間違いだったって言われた」  静かに聞いている菫青の表情は影が落とされていた。 「あの時は何が間違いか分かんなかったが、今は言われた理由が理解出来る。これって、親とよく似た大人になれたってことだ」  水晶が顔を上げた。ここからが見せ場だと言わんばかりに。 「けどな、親にケチつけられても、ガキの頃から抱えていた思想やら理想やらを守り抜いた人間は、新しい大人になれるんじゃないかとも思うんだ」  ひひひ。水晶の笑い声は微かで、嗚咽と似ていた。 「水晶……やっぱり水を持ってくるよ」
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