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「水晶。君が言うことは、時々僕を悲しくさせるんだ」  水晶が足を止めるのに合わせて、菫青も立ち止まる。 「菫青。悪かった。お前を傷付けたいワケじゃねえんだ」 「知っていたよ。だから水晶が謝る必要は無い。でも、月も太陽も、昼も夜も、それだけでいいって僕は思うよ」  暗闇に目が慣れているから分かった。菫青は泣いている。 「水晶も僕も、自分以上でも以下でもないんだよ」  おそらく、菫青の真の思いはこっちの方だ。 「俺は、自分以上に優れた奴になりたいがな」  悲しませてしまう口の利き方と分かっていても、これが水晶の常に考えていることだ。 「お前に出会えて良かったよ。菫青。なんでお前は、そこまで俺に心を砕くんだ?」 「なんでだろうね」  答えられないが困ってはいない菫青は、泣き笑っていた。  次の夜。部屋で布団を敷いていた。 「水晶。まだ起きるか?」 「今日は寝る。昼夜逆転していて悪いな」 「気にしていないよ」  明かりを消して、二人とも自分の寝床に入る。  天井を眺めていた菫青が、まだ眠気の来ていない水晶に顔を向けた。 「そうだ。昨夜は答えられなかったけど」 「なんだ?」  水晶は目を閉じたまま返事をした。 「僕は水晶が幸せでいてほしい。だから、水晶のことを強く思っているよ」 「そうかよ」 「そう。じゃあ、おやすみなさい」  それきり菫青は何も言わなくなって、次第に安らかな寝息が聞こえてきた。
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