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饅頭
菫青と水晶が二人で出歩いていると、饅頭を売っている店を見つけた。
動物の顔を可愛らしく模したものが二種類。肉入りと餡子入りだ。
「ねえ、水晶。僕、あれ買ってくる。帰ってから一緒に食べようよ」
「俺はいらねえから買わないぞ。お前の分だけ買ってこい」
菫青は一個ずつ買った。
「お前、本当に気軽にモノを買うよな。さすが良家の坊ちゃんだ」
「意地悪を言わないでくれ。あ、そうだ。水晶が良ければ半分こしよう」
「少しなら、貰う」
帰宅後、さっそく菫青は部屋の机の上に饅頭を出す。
「じゃあ、食べようか」
「俺は半分もいらんぞ」
水晶が肉饅頭の右目の部分をむしり取る。
欠けた顔と、その一部を何の感慨も無い顔で噛み砕いている同居人を見比べる菫青。
「水晶……情緒は無いのか?」
「どうせ腹の中なら同じ」
「それにしても少ししか食べてないじゃないか。もう一つは僕に分けさせてよ」
菫青は、手付かずの餡饅頭を真ん中から割った。
手をかけた片方を水晶に渡す。
「お前、意外と惨いな。脳天から真っ二つにしてんじゃねえか」
「そんな風に言わないで」
とある日のおやつの時間の話。
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