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自分の空間に戻ると、買ったばかりの思い出をインストールする。どうやら、持ち主は相当恵まれていたらしい。思い出の中の彼女と楽しげにショッピングしている。待てよ、この思い出、何か引っ掛かる。どこかで見たような……。そんなはずはない。これは他人の記憶なのだから。
私は「幸せ屋」と「思い出屋」を行き来するようになった。片方で幸せの代わりに思い出を売り、片方で思い出の対価として不幸になる。この繰り返しなら、次々と新たな体験をすることができる。すでに薄れている思い出を売るのだから、何も問題はない。不幸を幸せで帳消しにすればいいのだ。
「あんた、本当にいいのか? これが最後の思い出でなんだろう」
「問題ないさ。すでにどれが自分の思い出か分からないのだから」
私は最後の思い出を売ると、幸せを手に入れた。
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