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1. 運命の歯車はもう止められない
古びた鉄の柵を通り過ぎ、塀の途中にある崩れた部分から躊躇なく足を踏み入れる。今では誰も入ることのない旧校舎は静寂に包まれており、人の気配はない。
赤茶色のレンガは色褪せ、雑草は伸び放題となっている。だが中庭のカエデの木の下だけ、周囲と比べて草の生長は遅い。
そこは、勝手知ったるイザベルの特等席――もとい、避難場所だ。
(あれは何かの見間違いよ……ええ、そうに決まっているわ)
自らに言い聞かせ、ポケットから取り出した紙を慎重に開く。瞳は左右を行き来し、やがて空を仰ぐ。
数字は変わっていない。ということは見間違いではないということだ。
「どうして伸びるどころか、縮んでいるのよ……っ! こんなの、あんまりだわ!」
その場にかがみ、背中を丸めて泣き崩れる。
ラヴェリット王立学園高等部に通うエルライン伯爵令嬢、それがイザベルの身分だ。学園内では向かうところ敵なしで恐れられているため、弱音を吐ける場所は限られている。
この世の終わりのような嘆きを聞く者は、ここにはいない。
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