傷だらけのチッチ

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 昨日夕立ちがあった。  激しい雨と風、遠雷。  それらに一斉に揺らされた緑は、日が高くなればたちまち焼かれ干からびてしまう。  その前の、少しでも快適なうちに森の彼女を訪ねる。  彼女は起きてるだろうか?  炎天下ではおとなしい虻に付き纏われ数回刺された。  しかし僕はこの日の為にもう2度、手と足を象の様に腫らし免疫を得ている。  彼女に会うためのちょっとした試練。  腫れてる間の辛さはそう思う事にしている。  彼女はまだ眠たそうに朝の森に佇んでいた。  チッチはどちらかと言うとずんぐりしていて、夏生まれらしく赤茶けた肌といい、その姿形はとても僕の好みにはあてはまらない。  しかも面倒くさい。  彼女は脆く、傷つきやすい。  そしてその傷ついた事実を、いちいち知らせてくれる。  その事が僕を狂わせる。  そんな存在は他にないから。  それが自分にも似ていると思うから。
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