10人が本棚に入れています
本棚に追加
『完成したの?』
「うん!」
スマートフォンの画面に浮かぶ言葉を見て、雄大は満足げに頷いた。
「前に姉ちゃんが歌った音源を聴きながら、頑張って編集したんだ。まだまだ機械音って感じだけど、姉ちゃんの癖を再現する努力はしてみた」
じゃあ、このしゃくりは私の真似ってこと?
……ちょっと多すぎないかな。私、こんなにしゃくりが多いんだ。
マサに聴かせたら怒られそう。マサは私に注意するとき、ふざけて頭をコツンって小突くんだ。
……ふふっ。
息を漏らして笑うと、雄大は少し不安そうに頭を傾けた。
私は、思わずスマートフォンの録音音声を再生していた。
〈ありがとう〉
久しぶりに聞いた声は、やっぱり馴染む深くて好きな響きだった。
抱きつこうとすると、「うわっ病人が何やってんだよ。うざい!」と叫ばれた。失礼な。
『でもまだまだですな。今の技術はすごいもん。もっと本当の私みたいに編集できるはずよ、マサならね。会いに行かなくちゃ』
「はいはい」
ポチポチと文字を入力したスマートフォンを差し出すと、雄大は嬉しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!