私の歌声をもう一度、 あなたに届けたい。

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『10時に行くね』  退院翌日。一方的に約束を送りつけて、家を出た。  パソコンを持った雄大と一緒に、マサの部屋の玄関前で立ち止まった。  9時55分。  雄大が一緒ならこんな時間に着くんだなあと思いつつ、玄関のチャイムを押した。  ピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴り響く。中から人が出てくるような物音がしない。  首を傾げると、雄大はチッと舌打ちをした。 「居留守だろ」  そう言って大きく息を吸い込んだ。 「正弘くん! まーさーひーろーくーん!」  うわっ、うるさい。  すると中からドッタンバッタンと音がして、ドアが開いた。 「おまっ、近所迷惑だ!」 「お邪魔しまぁす」 「うわっ」  強引に体を滑り込ませた雄大に続いて、私も部屋に入った。
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