私の歌声をもう一度、 あなたに届けたい。

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『ボーカロイド。私の声を録音したの。マサならもっと私みたいにできるでしょ』  マサは一瞬、スマートフォンを使う私を見て痛ましげに目を細めたが、文章を読むなり立ち上がった。 「雄大。元データをくれ」 「え、元データ? あ、うん」  雄大は慌ててパソコンを操作し始めた。 「あのさ、おれが原音設定まで終わらせたデータと録音したそのままのデータが残ってるけど、どっちが良い?」 「そのままのやつ」 「あー、やっぱり。おれが費やした膨大な時間は、正弘くんを立ち直らせるためだけのものだよね。正弘くんなら、一から全部編集したがるよね……」  雄大は肩を落とした。  データを受け取ったマサは驚異的な勢いで編集し始めた。 〈マサ〉  肩を叩いて、録音してあったマサの名前の音声を再生すると、マサはグルンと振り返った。 『ボーカロイドのこと分かるの?』  スマートフォンの画面を見せるとマサは頷いた。 「ああ、3年前くらいにハマってたんだ。雄大と一緒に」 「そうそう」  だからこんなに理解が早くて、すぐに編集まで始められるのね。 「原音設定を真面目にしないと音が自然かつ滑らかに繋がらないからな。その後はアクセント、しゃくり、ピッチの揺らぎ、抑揚、息の量、ビブラート……」  私は雄大と顔を見合わせて笑った。
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