私の歌声をもう一度、 あなたに届けたい。

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 病室のベッドではすることがなく暇だった。  寂しくてマサに謝罪のメッセージを送ると、すぐに返信が来た。 『これからのスケジュールは全部調整したから、気にせず治療に専念して。あと、病気になったのは俺が無理なスケジュールを組んで次々に歌を練習させたからかもしれない。ごめん」  そのメッセージを最後に、いくら連絡してもマサから返事がこなくなった。  雄大に頼んで様子を探ってもらうと、『KiRaの歌がもう聴けなくなるなんて受け入れられない。俺のせいだ』というメッセージが送られてきたと教えてくれた。  もし声帯の酷使が関係していたとしても、歌手として活動したことを決めたのは自分だし、組まれたスケジュールに不満なんてなかったし、正しい発声方法ができていなかったとしたら、それも私の責任だし。  マサは何も悪くないのに、歌うこと自体以外は全て任せていたせいで、感じる必要のない責任を感じているようだった。  SNSを見ていると、KiRaが予定していたはずの音楽番組への出演を急遽取りやめ、動画投稿も一切していないことが話題になっていた。  根も葉もない噂が一人歩きしていて、自分のアカウントで病気について発表した後はSNSからログアウトした。
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