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次の日。
録音の最初から良い声で歌えるようにお風呂で声出しをした。小さな声でも響くから楽しい。
さて、そうして録音を始めたのはいいのだが。
「あんああいあうあ」
「いんいいういえい」
「うんううえうおう」
「えんええおえあえ」
「おんおおあおいお」
5回録音して分かった。これやばい。
録音の一覧表を見てげんなりした。
濁音とか半濁音とかはともかく、つぁつぃつつぇつぉとか、くぁくぃくくぇくぉとか。確かに必要なのは分かるけど量が多すぎる。
「だから言ったじゃん、ものすごく多いよって」
「こんなに多いなんて思わないよ……」
「安心して、鼻濁音もちゃんと録音するから」
歌手としては安心だけど、録音者としては不安しかない。
何度も休憩を挟み、残りの量に絶望し、試し聴きして気に入らなかったものは録り直して、2日かけてなんとか終わらせた。
「やっと終わったぁ……」
最後の一つを録音して崩れ落ちると、雄大は遠い目で笑った。
「この後に待ってる編集作業のことを考えると、おれはさらに絶望だよ……」
あ、録音量が多いと編集も大変だってことを忘れてた。
「よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げると、雄大は大きなため息をついた。
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