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「やっぱり、そうだと思うんだよな。もしかしてなんだけど、保育園って端っこの山の上のところじゃない?」
意味が分からない質問だったけど、当たり。古い昔、私が通っていたのはこの街の端っこにある山の上にポツンとある保育園だ。なんなら田舎町なので普通は幼稚園が多数。
首をかしげたが「そうですけど」と返す。すると彼はうんうんと頷いていた。
楽しそうなのは私たちの会話を聞いている友人の彼女だ。もうスキップでもしそうな雰囲気。ちなみに旦那さんは息子くんをあやすので必死な様子。
「俺と同じで、多分なんだけどその頃にこの力に関して話していることが有る」
有り得ないことではないけどこれは喜ぶ人が居るのは確かでもう横では華やかさに輪をかけにこやかな顔になっている。ロマンチックにも思える運命のイタズラに友人が小躍りして喜んでいた。私が喜ぶんだった普通だけど、彼女が喜んでいるのはちがうだろう。
ふと私の古い記憶を思い出す。昔に「同じ色」と話をした記憶はもちろんある。だから今は彼の姿を眺めていた。
「昔、そんな記憶があるけど、相手はもっとこう、鼻たれ坊主だったんだけど」
「うん。それが僕です。間違いありません。犯人はわたくしです」
少し冗談を交えながらなのでなんとなく話は進みやすい。こうなると色のことも気になる。
「それで、本当に人の色が見えてるんですか?」
「見えてるよ。昔もはなしたけど」
「そんな細かいことまでは覚えてなくて」
つらつらと話をしている私たちを見て友人は時折楽しそうに振り返る。多分、特殊能力のことではなくて私に恋愛能力が少ないことが理由なんだろう。その辺は私自身考えてないのだが、先に幸せを掴んだ友人は私のことを心配してくれてるんだろう。小さな親切、大きなお世話でもあるのだが。
「例えば彼女たちの色は?」
「そうだね。検証してみようか。お友達の彼女はとっても鮮やかな虹色だね。これは本当に華やかで美しいくらい。きっと幸せを掴むために生まれたんだろう」
確かに色としては私が見ているのと印象まで一緒だった。
だけど、その解説に「占いもできるの?」と友人が振り返って聞いていた。盗み聞きは良くない。
「占いってほどのことではないけど、言うなれば統計的にかな。今まで人の色を見ているとなんとなくこうなんじゃないのかって思うから、それを解説してみた」
「そーなんだ! この子はねー、そういう判断はできないって言うからさー」
ちょっと馬鹿にしたみたいな友人の言葉に「だけど、難しいことなんだよ!」と返してみる。
「うん。難しいね。だけど、あくまで個人的な意見だから。そして旦那さんは本当に純白だね。こんなに真っ白な人は稀だ。カラフルな人とは良く合うのかも」
こちらも私と同意見。そして旦那さんも「俺ってそんなですかね。結構腹黒いですよ?」と前に私にも言われたのでちょっと反論していると「そう返してしまうのも、白い特徴化も」なんて彼が言う。
「さて、この王子さまは、煌びやかな金色を帯びてる。ギラギラした趣味の悪い金じゃなくて、輝いているみたいな色だ。二人の良い部分だけを受け継いでるんじゃないかな」
息子くんの色まで一緒だからもうこれは本当に私と同じものを見ていると信じるしかない。
黙って着いて歩くようになった私がふと気付くと、もう花火会場が近くて人が溢れかえっている。そして花火が始まった。
遠くでカラフルに光る星粒を周りの人が見て声を挙げていた。だけど、私はあんまり花火は好きじゃない。
そんな風に思っている時に友人の息子くんが泣き始めた。
「ありゃー、花火の音に怖がってるのかな?」
「少し離れようか?」
あまり打ち上げ会場から近くはないけど、やはり大きな花火が上がるとお腹に響くほど。赤ちゃんなら怖がっても仕方がない。私も普通に好きじゃない花火から離れるつもりだった。
「じゃあ、この場で解散しようか」
友人は私に手を挙げている。どうやら彼女は元から別行動をする予定だったみたい。そんなの顔を見ればわかる。
こうなってしまった彼女はとても頑固なのも知っている。
一応「ちょっと」と迷惑そうな顔をしてみたけど、やはりニコッと笑われただけで彼女たちは離れてしまった。
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