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それ以来私は家族に会っていない。きっと私の失踪に憤慨し、飢えでとっくに死んでいるだろう。しかし同情はしない。この国で生きていくなら相手を騙してでも生きなければいけない。
そして周りを信頼してはいけない。母たちに教えてもらった唯一の教訓だ。
それから私は生きることに執着した。生きるためなら盗みも喧嘩も厭わない。ただ夜の星を眺めるたびに今日が終わったと安堵する日々が続いた。
いつしか私の存在は極悪非道として街に名を馳せ、初めは街の不良やチンピラたちだった敵が軍まで広まっていた。12歳になった私は軍の備蓄庫から食料を奪う中で左足を撃たれた。一瞬どうして自分が倒れているのか分からなかったが、途端に熱石を押し付けられているような痛みが走り川のように血が足を流れた。苦しみもがきながらも逃げ回っていたが、次第に軍人の怒声が近く感じ、久しぶりに恐怖を身に感じた。死ぬ、死ぬ、死ぬ。
遂に足が止まりかけた時、不意な力で私は壁際に引き寄せられた。軍人の声が遠ざかる音と心臓の波打つ音の中そっと目を閉じた。
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