2、白い結婚なのでしょうか?

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 しかし、しばらく待ってみても、何の反応もありません。  おそるおそる私は目を開けました。  すると、私を見下ろしているラオニール様と目が合いました。 「ひっ」  いつも通り怖いお顔をされていて、私は小さく悲鳴を上げてしまいました。  そうしたら、ラオニール様はため息をつかれました。  こころなしか、お背中の翼も下がっている気がします。  旦那様に対して悲鳴をあげるなんて、呆れられたことでしょう。申し訳ございません、と私が謝罪しようとしていた時でした。 「おやすみ」  ラオニール様は低い声でぽつりとつぶやかれ、私の部屋を後にしました。……あら?   「おやすみなさい、ませ」  私がようやく声を発せたのは、殿下の足音さえもすっかり聞こえなくなった時でした。  私たちは夫婦となったはずなのに、床を共にするどころか、少しも触れられていません。  もしかして、これは『白い結婚』というものなのでしょうか。  実家が裕福なわけでもなく、特別な才があるわけでもない私を殿下がなぜ望まれたのかは分かりません。ラオニール様にとっては、この結婚は何の利益もないはずです。  しかし、これではっきりしました。  やはり、ラオニール様は私をお嫌いなのです。  何もなくて少しホッとしましたが、同時に複雑な気持ちにもなりました。どうして愛してもいない私を妻としたのでしょうか。  貧しいながらも、マルダンヌ家のお父様も、兄上も、亡くなったお母様も、私を愛してくれていました。けれど、ここには私を愛してくれる方は一人もいらっしゃいません。  場違いなお部屋の中で心細い思いをしながら、私はシタン家で初めての夜を過ごしたのです。
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