3、お世話して頂くのは慣れません

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「とてもよくお似合いです」  エマはそう言ってくれましたが、ドレッサーの中の私は不安げで情けない顔をしていました。私のような者がこんなに素敵なドレスを着るなんて、ドレスに申し訳ない気がしてしまいます。   「そうでしょうか?」  思わずエマに聞き返していました。  そうしたら、表情は変わらないながらも、エマは力強く頷いてくれました。 「あ、ありがとうございます」  本当に似合っているのでしょうか。  それは分かりませんが、ドレスはとても愛らしいです。  タンスの中に入っていたドレスも、このお部屋の家具も、驚くほどに私の好みを形にしたものばかりです。 「こちらのドレスは、どなたかのお下がりなのでしょうか」  気になって、エマに聞いてみました。 「ラオニール様自ら専属の職人にご命じになり、ユシェル様のために全て新しく仕立てさせたものにございます」  エマはまたうやうやしく頭を下げました。 「ラオニール様が、私のために……」  全て新しく仕立てて頂いただなんて、もったいないことでございます。  ですが、私のためにして頂いたと伺って、私の頬が熱くなります。ラオニール様自らご用意くださったなんて、信じられません。 「もしかして、このお部屋も、ラオニール様が?」  予想はしつつも、私はエマに聞いてみました。 「はい、そうでございます」  やはり、そうなのですね。  エマは私が思っていた通りの答えを口にしました。  幼馴染でも私は分からないことばかりなのに、ラオニール様は私を見ていてくださったのでしょうか。 「どうしてラオは、私のためにここまでなさってくださったのでしょうか」  つい感慨深い気持ちになり、大変不敬ながらも昔の呼び方が出てしまいました。   「魔王子の妻として恥ずかしくないように、とのことでございます」 「そう、ですか」  もしかしたら愛されているのかもしれない、なんて一瞬でも思ったのはやはり間違いでした。  貧乏男爵令嬢の私と、第六魔王子のラオニール殿下。  ただでさえ不釣り合いなのです。  みすぼらしい格好をしていたら、殿下に恥をかかせてしまうというわけですね。  ですが、それなら、はじめから身分の釣り合う家から美しいご令嬢を妻になさればよろしかったのに。  第六魔王子様であれば、どんなご令嬢もきっと喜んで妻となるでしょう。  私は、ラオニール様がますます分からなくなりました。
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