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201X年
兎を追い不思議の国へ迷い込んだアリス、亀の背に跨り竜宮城を訪れた浦島、そしておむすびを追い穴にすっとんしたお爺さん。
きっかけは様々だが、この世と別の世界は稀に繋がることがある。それも貴方がひとりきりの時に。
特に雨上がりの少しずつ空が白み明るくなるその時は、周囲の光り具合や静けさから繋がり易くなる。
雨の公園では、幼稚園帰りの子供たちが元気いっぱい遊んでいる。
男の子も女の子も、一生懸命バケツに砂場の砂を集めては口々に、重たい、よいしょ、など言いながら運ぶ。
「今日はこの水溜まりを埋めようね」
母親たちは輪になり、横目で子供たちを見守りつつも会話に花を咲かせている。
間もなく子供たちから歓声が上がった、遂に水溜りを大量の砂で埋め立てたのだ。
この瞬間、逆さま世界への扉が閉じた。
この後で新たに出来た水溜まりには、トリガーの役割がない。
風が吹けば桶屋が儲かる━━一見無関係そうな咲依の過去改変が、意外なところに影響を及ぼした。
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