黒のウエディングドレス

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私が嫁いできた初日に、義母が雇っていた使用人を減らした。 そしてその仕事を私にさせると言ったのだった。 それは炊事洗濯から義妹の世話まで全てだ。 義母たちは私の実家から受け取った持参金で好きな物を買っている。 「オリビアが来てくれて本当に嬉しいのよ。よく働いてくれるし自慢の嫁だわ」 「そうよね。こんなに何でもできるお嫁さんを貰うなんて、兄さんったら幸せ者よ」 彼の家族は口ではいつも私を褒めてくれる。 けれど全ての雑務を私にやらせて、自分たちは何もやらない。 「無理よ。お茶会の準備なんて私がする事じゃないでしょう。勿論お客様をもてなすのは私の仕事だけど、お菓子やお茶の用意や、テーブルの配置やクロスの洗濯なんかは貴方にお願いするわね」 「それでは、手伝いの者を雇っていただけますか?」 「まぁ、そんなことは無理よ。だって嫁がいるんですもの。うちはそんなに裕福ではないのよ。嫁がいるのに別の使用人を雇うなんてお金の無駄だわ」 文句を言おうものなら、自分は貴族だからそんな事はできない。 平民出身の私ならできるでしょうと丸投げされる。 いい加減、我慢の限界がきた。 「エドワード。いくら何でも私をメイドか何かと勘違いしているとしか思えない。お義母様に言って下さいませんか?」 「そうだね。君が夜遅くまで屋敷の仕事をしているなんておかしい」 「朝も一番早く起きて、朝食の準備をします。夜も皆さんが寝てから最後に休みます。手は水仕事で荒れ放題ですし、休みが一日もないのはとても辛いです」 嫁だから無給で働かされるのは耐えられたとしても、一日も休みがないのは耐えられない。 家族の世話を休める日なんてないのだから。 「もうしばらくして、領地が落ち着いたら使用人を増やそう」 「エドワード。もし、できないのなら私の仕事を家族の誰かが手伝ってくれるわけにはいきませんか?義妹が二人いらっしゃるじゃないですか」 「それは無理だよ。妹たちは貴族なんだから。家事なんてやった事がないからね」 「……そうですか」 エドワードは私をぎゅっと抱きしめた。 「僕が働いて、余裕ができるように頑張るから、もうしばらく我慢して欲しい」 彼は彼なりに頑張っているのは知っている。 領地経営がうまくいってないのは、これからの仕事のやり方によって変わるだろう。 今年の収穫で、何とか男爵家の領地が潤ってくれることを願うしかない。 私はそれだけを望みに、毎日馬車馬のように働いた。
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