黒のウエディングドレス

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オリビアの馬車が崖の下で残骸となって見つかったのは一週間後のことだった。彼女の亡骸は捜索の甲斐なく見つかる事はなかった。 「いったい、どうするつもりなのよエドワード!」 母親はエドワードを責め立てている。 「あの子がいなかったら、あの子の実家から援助が受けられないでしょう!」 「まったく!なんで実家になんて帰したのよ。ここでじっと働かせておけばよかったものの」 「あの子の実家から持参金の返金の要求が来ているわ!娘がいないのなら返せっていうのよ。まったく何もかもめちゃくちゃじゃない!」 「返せなんて無理だよ。もう使ってしまったじゃないか!事故で死んだんだ仕方ないだろう」 エドワードは苛立ちながら拳をテーブルに打ちつけた。 「お父様!これからどうやって生活するのですか?」 「オリビアを殺しただなんていわれているんだ。持参金はオリビアに何かあった時のために持ってきた物だ。何かあったのだから返金しなければならない」 男爵は王都からやって来た憲兵たちに、事情聴取を受けていた。オリビアの事故に不審な点があったと言われたという。 「とりあえず、オリビアから取り上げた宝石を売り払え、ドレスもだ」 「取り上げただなんて失礼だわ。彼女が使わないから私がもらった物よ!」 「売れるものは売れ!殺人容疑までかかってしまうぞ!」 オリビアは手紙に、男爵家で自分がどのように扱われていたのかを書いて送っていたようだ。以前はうちの悪口など書いていなかった。最近送った手紙だろう。 そして極めつけは、命を狙われている。このままでは危険だから実家に避難しますという最後の手紙。 こちらとしては訳が分からない。 自分達に疑いの目が向けられないよう、屋敷の数少ない使用人たちは、オリビアがここでどのように暮らしていたかを憲平に話した。 まるで奴隷のようにこき使われていたと。 「虐待までならまだしも、殺人の疑いまでかかっているんだぞ!」 現男爵である父親は、ぎりぎりと奥歯を噛み締めている。 「それにエドワード、あなたメイドと浮気して子供までつくっているんじゃない!認知なんてしませんからね。うちの子じゃないわ。あんな金にもならないような女の子供なんてどうするつもりなの」 「くそっ!オリビア!あいつが死んだせいで……」 「もっとオリビアを大事にしておいたら良かったのよ!」 「お前も、オリビアをいいように使っていただろう!他人事みたいに言うな!」 地獄絵図のような男爵家。 しかし、オリビアは彼らをこれで許してやろうとは思っていなかった。
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