黒のウエディングドレス

6/7
前へ
/7ページ
次へ
「我が男爵家の領地は、ミゲル様の領地と隣り合わせでございます」 オリビアは、エドワードの不貞の現場を見た後、実家には帰らず、その足で辺境伯の地へ来ていた。 手土産に、実家へ持って行くはずだったワインを持参して。 ミゲル様は、いったい何者かと値踏みするかのような視線をオリビアに向ける。 「ここには、私が男爵家に嫁いできた時の持参金と、今までに男爵家に援助していた金額が記されています」 男爵家に実家が出仕してた金額が記された出納帳を、ミゲル様の目の前に出した。彼はその内容を確認する。 「これが私に何の関係があるんだ」 「持参金は嫁いだ私が何かあった時のための物。嫁ぎ先の実家が好き勝手に使っていい物ではない。返金させます」 「それは無理だろう。君が嫁に行き、そこで暮らしていけるように渡された金だ。男爵家の嫁になったんだろう。ならば男爵の金だ」 「私は辺境伯様に商談を申し込んでいます。私の境遇に対して同情を得ようとしている訳ではありません」 彼はフッと鼻で笑った。 「それで君の望みは何だ?」 「男爵が持っている領地を、辺境伯様が奪い取って下さい。彼らに殺人の容疑をかけ、爵位を奪い領地も財産も全て奪い取ります」 辺境伯は、男爵家の領地を欲しがっていた。 男爵の領地はミゲル様の領地と隣接している。それに、広大なブドウ園を持っている。 領地経営はうまくいっていない。けれど領地の経営の仕方が悪いだけだ。 私は執務も手伝わされてきた。商売人の娘として育ってきた自分は、彼らがどんな間違いを犯しているのかが分かっている。 男爵家事態、オリビアの実家からの援助がなければ、借金まみれで爵位返上を余儀なくされるのは時間の問題だったはず。 「男爵家を没落させ、領地を没収させて投獄でもさせるのか?それはまた、大それた計画だな」 「大それた計画に、加担しては頂けないでしょうか?勝算は十分あります」 最悪、私の命を懸ける。 その覚悟を持って、私はここを訪れていた。 「……腹黒い女だな」 辺境伯はニヤリと笑った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加