86人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
火焔竜が事切れると、チュチュの肩の上の翼竜の子が、その魂を鎮めるように、ピィーッ……と高く一声を啼いた。
降る雨に血を洗い流されたアッシュの傷口に、チュチュが血止めの薬草を当てがい、包帯を巻く。
そうして亡き骸に手を合わせるチュチュに、アッシュも倣い合掌をすると、続く道先へと足を運んだ。
「ねぇ、アッシュ……」
「うん? なんだ」
「その……ピーちゃんが乗れるくらいに育つまで、アッシュも……チュチュといっしょに、いてくれるんだよね?」
ふと尋ねられ、「あっ……?」と、驚いたようにアッシュが声に出す。
「あっ、ああ……おまえさえ、良ければな……」
いつになく顔を赤らめて見えるアッシュに、
「よかった……」
チュチュも仄かに頬を染め、口にした。
降っていたにわか雨はいつしか上がると、広がる青空に遥か遠い山々の景色が映えて、二人と一匹を明るい未来へ導く、鮮やかな色彩の虹が架かった──。
終
最初のコメントを投稿しよう!